機能性下垂体腫瘍治療のより確実な治療法の確立

成長ホルモン産生腫瘍やACTH産生腫瘍(クッシング病)に対する手術治療では腫瘍をかけらでも残存させないようにする工夫が必要です。
下垂体腫瘍の大部分が取れていたとしても、一部の腫瘍が残存することで成長ホルモンやステロイドホルモンが高い状態が継続し内分泌学的に治癒しないことが多いためです。

下垂体は海綿静脈洞という静脈に挟まれて存在しています。成長ホルモン産生腫瘍やACTH産生腫瘍などは周辺の海綿静脈洞内にも浸潤することがしばしばあり、これが手術での根治性を低下させています。

近年内視鏡技術の進歩、止血剤の進歩により、この部分の腫瘍も摘出可能となってきました。
腫瘍細胞は海綿静脈洞内側壁への術中は確認できなくても浸潤している可能性(ocult invasion)を考え、積極的に海綿静脈洞内側壁の摘出に取り組んできました。
実際に摘出した海綿静脈洞内側壁を病理検査してみると腫瘍細胞の浸潤がおよそ半数に認められておりました。
もちろん海綿静脈洞内側壁を摘出すると静脈が空きますので出血が起こりますが、止血剤の使用方法を工夫することで平均で約100cc程度の出血量の増加に留めることができました。この量は献血での採血量よりも少なく、寛解率向上が望めるのであれば許容されうる出血量であると考えられます。

このような成長ホルモン産生腫瘍、クッシング病などの機能性下垂体腺腫に対する海綿静脈洞内側壁摘出の方法、ならびにその病理所見について報告し、学術誌に掲載されました。

機能性下垂体腺腫にお悩みの患者さんに対してよりよい治療を提供するための重要な報告です。

 

掲載雑誌:World Neurosurgery
Removal of the medial wall of the cavernous sinus for functional pituitary adenomas: A technical report and pathological significance Running head: Medial wall removal for functional pituitary adenomas.