内視鏡は下垂体腫瘍、脊索腫、頭蓋咽頭腫のみならず様々な脳腫瘍に対して有効な治療法です。愛知、東海地方の中核病院である名古屋大学脳神経外科の内視鏡治療をお知らせします。

頭蓋咽頭腫

頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ、クラニオ)のまとめ

下垂体近傍から発生する良性腫瘍です。
子供から大人まで発生します。
良性腫瘍ですが再発率が高く、腫瘍細胞がどんどん増えるというよりも嚢胞(腫瘍のふくろ)がどんどん大きくなることで症状を出します。
頭の中心にできるため非常に厄介です。
ホルモンを分泌する下垂体部分にできるため、術前後にホルモン補充療法が必要になることが多いです。
症状は視力視野障害や下垂体機能の低下(尿が増える、脱力、発育障害など)がメインですが、大きくなると記憶障害が起きたり、最悪の場合死に至ります。
治療は手術による摘出がもっとも有効ですが、残存する場合などには放射線治療を組み合わせるなどの治療戦略をあらかじめ組み立てる必要があります。

頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ、くらにおふぁりんぎおーま)

頭蓋咽頭管という通常胎児期に消失する組織が消えずに残存しその部位から発生する腫瘍です。原発性脳腫瘍の3%を占めます。小児から老人まで幅広く発生します。

 

 

 

 

 


上記の患者さんに対して経鼻内視鏡手術を施行しました。下図は摘出後のMRIです。良好な摘出が得られています。

発生部位

下垂体付近から発生し、通常は鞍上部腫瘍(トルコ鞍という器の上の部分に発生する腫瘍)として認識されます(下垂体の正常についてはこちらへ)。この部位は脳の中心に近い部分で上に視神経や視床下部、左右に内頚動脈や動眼神経、下方に下垂体組織、後方に脳底動脈が存在します。これらはどれも重要な組織であり、腫瘍の伸展方向によって出現する症状が違います。

 

主な症状

発生部位や腫瘍の伸びた方向、年齢によって症状が変わりますが主な症状は視野障害や頭痛などです。
上方に伸びた時には上にある視神経を圧迫し視野障害(両耳側半盲など)が発生します。また更に大きくなると頭の中の水の流れを障害し水頭症を発症、頭痛・嘔吐・意識障害などの症状を発症します。水頭症に至らなくとも、視床下部という組織に伸展すると物忘れ、知能低下などの症状を発症することもあります。
若年者では下垂体からのホルモン分泌が障害され二次性徴がなくなることがあります。この場合低身長、無月経、陰毛の脱落などが起こります。
成人でもホルモン分泌が障害されると体のだるさ、尿量の増加などがみられ、検査所見では電解質異常、肝機能異常などを呈することがあります。(下垂体からの主なホルモン分泌についてはこちらへ)

治療方法

病理学的には良性腫瘍とされており、全摘出することにより治癒が期待できます。しかしながら、その発生部位が頭の中心部であり周辺に重要構造物が存在することや、これらの構造物に強く癒着することから摘出が難しいことも多いです。周辺の組織を傷つけることで重大な神経症状を残すことが知られており、全摘出すべきか、その後の症状のために一部残存させるべきかを判断する必要があります。その後の人生に大きく影響を与えますので、複数の治療法を組み合わせるなど治療戦略を十分に練っておく必要があります。

主な治療法は以下のとおりです。

  • 手術治療…この病気の第一選択の治療法です。治癒の可能性が期待できる治療法ですが、前述のとおり有意への癒着の程度によって摘出できる限界が決まってしまいます。
    手術方法は開頭術と経鼻術の二通りがあります。
    開頭術は古くから行われ歴史のある手術法です。前頭部を開ける方法(両側前頭開頭)、やや側方を開頭する方法(前頭側頭開頭)、やや上の方から脳室を経由して手術する方法(経脳室、経脳梁アプローチ)がよく利用されます。頭蓋咽頭腫の伸展方向からこれらの手術方法のうち、どの方法がもっとも適切か検討し手術を行います。
  • この中で最近は経鼻内視鏡手術が発展してきており、この手術方法で摘出出来るものが増えてきています。もともと腫瘍の発生する部位が視神経の下側がメインであり、視神経を守る、脳を守るという意味では有利な手術方法であると思います。しかしながら上方への伸展が大きい例(現在の限界はモンロー孔という髄液の通り道のあたり)や、側方伸展が強い例(現在の限界は内頚動脈の外側縁を超えたあたり)が限界であると考えられ、この場合には開頭術を選択するか、経鼻術を行った後に開頭術を行う二期的な手術、あるいは経鼻手術と開頭手術を同時に行いお互いの死角を補う手術が選択されます。
  • 放射線治療…ガンマナイフという放射線治療で一定の腫瘍制御が出来るとされています。
    ガンマナイフ治療には限界もありサイズが大きいと出来ませんし、小さいものであれば手術による摘出により治癒が期待できるということもあり、第一選択とはなりにくいです。
    放射線治療のデメリットとして、再発時に手術が難しくなる点、照射後時間が経ってから内分泌異常や視野障害(これらは当て方にもよりますが)などがあげられます。再発する可能性の高い腫瘍であることから適応は慎重に考えた方がよいかもしれません。
    現在は手術を行い、摘出が非常に難しい部分に対する補助治療として行うことが多いです。このため手術を行い摘出が不可能な時には、後に続くであろう放射線治療を行いやすい形に摘出を行うことも重要であると考えています。
  • 嚢胞内薬物投与…インターフェロンなどを嚢胞内に注入する治療法です。嚢胞拡大を抑えられる可能性が示唆されておりますが、必ず再発します。急場を凌ぐ治療として可能性があると思われます。

術後管理

頭蓋咽頭腫の術後はホルモンの異常などが起きやすいです。
術後短期的には尿崩症というおしっこの量が増えてしまう状態になったり、ステロイドホルモンの分泌が抑えられてしまうなどの内分泌系の異常が起きやすいです。これらは注射剤、内服薬を使用してしっかりと手術後の管理を行わないと手術がうまく言ったとしても術後管理で状態を悪くしてしまう可能性があります。
長期的には上記のホルモン異常に加えて甲状腺ホルモン、成長ホルモン、性腺ホルモンなどの補充が必要となることがあります。成人例でも補充は重要ですが、特に小児症例ではこれらのホルモン補充がその後の人生に関わってきますので適切な補充が行える施設での治療が望ましいと考えます。

発見ー検査ー治療ーその後の大まかな流れ

よく質問されますので追記していきます。今しばらくお待ち下さい。

名古屋大学での治療方針

頭蓋咽頭腫は最初の治療が非常に重要な病気です。
我々は神経内視鏡グループとして鼻からの手術や脳室内からの手術を担当しております。この治療は頭蓋咽頭腫に対して非常に強力な治療法であると自負していますが、病気の広がり方によってはやはり開頭術が必要な場合もあります。この場合には名古屋大学頭蓋底手術チームと協力し開頭術を選択したり、場合によっては共同で手術にあたることもあります。
頭蓋咽頭腫の伸展具合や周りの組織への癒着の程度によっては機能を温存するために腫瘍をあえて残し、放射線治療を行うなどの一つの治療に固執することなく最善の治療を選択するようにしています。
また手術前後で内分泌の異常が起こることも多いため、内分泌内科との連携しながら治療をさせていただきます。

最初の一手が肝心の疾患です。セカンドオピニオン、症例のご相談はこちらへ。

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