内視鏡は下垂体腫瘍、脊索腫、頭蓋咽頭腫のみならず様々な脳腫瘍に対して有効な治療法です。愛知、東海地方の中核病院である名古屋大学脳神経外科の内視鏡治療をお知らせします。

ACTH産生下垂体腺腫

ACTH産生下垂体腺腫(クッシング病,Cushing disease)について

ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を作ってしまう下垂体腺腫の一つです。
血液中のコルチゾール(ステロイドホルモン)が高い状態が続き、体重増加、中心性肥満、高血圧、糖尿病等をきたします。
感染症に非常に弱い状態になり、敗血症で死亡する可能性があります。
手術(経鼻手術)による摘出が第一選択ですが、サイズの小さい腫瘍が多いため術前の検査が極めて重要です。

ACTH産生下垂体腫瘍とは文字通りACTH(副腎皮質刺激ホルモン)というホルモンを産生してしまう下垂体腺腫のことです。別名でクッシング病とも呼ばれます。

このホルモンが副腎皮質を刺激することで副腎皮質ホルモンの一つであるステロイドホルモンが分泌されます。ステロイドホルモンが過剰に分泌されると満月様顔貌(顔が丸くなる)、中心性肥満(体幹部は太るけど手足は太らない)、赤色皮膚線条(皮膚が薄くなり、太ることで妊娠線のような筋が出来ます)などの症状を呈します。ひどくなると精神症状を呈することもあります。
上記症状は表に出る症状ですが、ステロイドホルモンが高いことで高血圧、糖尿病、骨粗しょう症などを呈します。またステロイドホルモンは強力に炎症を抑え、免疫抑制効果がありますので、この状態で感染を起こすと治療が難しく死に至ることもあります。

ACTH産生腫瘍(クッシング病)が疑われたらどうするか


ACTH産生腫瘍が疑われた場合、通常の採血方法でホルモン値を測定しても下垂体性のものなのか、副腎自体の問題なのか、はたまた別の場所からのものなのかわかりません。しっかりとした治療をしないと生命に関わる病気ですので、様々な試験を行った上で適切な治療を行う必要があります。

まずは外来にてできる検査を行います。

・採血検査
ホルモンの基礎値を測定します。これで他に異常なホルモン値がないか、糖尿病などの合併症は無いか検査を行います。

・0.5mgデキサメサゾン抑制試験
外来にて施行可能な検査の一つです。0.5mgのデキサメサゾンという飲み薬を前日夜に内服してもらい、翌朝外来受診をして採血を行います。通常はコルチゾールの分泌が抑制されますが、Cushing病では抑制されず、血中コルチゾール地が高くなります。

・造影MRI検査
MRIの検査ですが、造影剤という薬を点滴で打ちながら検査を行います。ACTH産生下垂体腺腫は比較的小さい下垂体腺腫であることが多く、造影剤なしでは発見が難しいことも多いです。

上記検査にてACTH産生腫瘍(クッシング病)の疑いが強まった場合には入院の上検査を行います。

・血中コルチゾール日内変動
通常コルチゾールは夜間に分泌が抑制されますが、ACTH産生下垂体腺腫の患者では夜間でもコルチゾール値が5μg/dlという値を下回りません。複数日の夜間に採血することで確認を行います。

・蓄尿尿中コルチゾール測定
おしっこを24時間ためてその中にあるコルチゾールを測定します。

・8mgデキサメサゾン抑制試験
前述の0.5mgという少量のデキサメサゾンではなく、8mgという多めのデキサメサゾンの内服を行い、翌日に採血を行います。ACTH産生下垂体腺腫(クッシング病)では0.5mgでは抑制されませんが、8mgではACTH、コルチゾールの分泌が抑制されます。これに対して異所性ACTH産生腫瘍の場合には8mgを投与しても分泌の抑制は起こりません。

・ddAVP試験
デスモプレシンというおしっこをとめるホルモンを投与してホルモン分泌の変化を見ます。通常はACTH、コルチゾールの産生には関与しませんので、ホルモンの分泌に影響を与えませんが、ACTH産生下垂体腺腫ではACTHの分泌が促進されます。

・選択的静脈洞血サンプリング
下垂体近くの血液を採取することにより腫瘍が下垂体の右側にあるのか左側にあるのかを見極める検査です。カテーテルという細い管を足の付根の太い血管から海綿静脈洞というところまで誘導し、そこから直接採血を行います。細い静脈を通すときに痛みを伴うこともありますので、MRI検査で明らかな場合にはこの検査は省略することもあります。

ACTH産生腫瘍(クッシング病)の治療法

治療の第一選択は手術治療です。他の下垂体腺腫と同様に鼻から内視鏡を挿入し治療を行います。他の下垂体腺腫との違いは、小さな腫瘍の残存も許されない厳密な操作が必要な点です。腫瘍をしっかりと摘出した後に内視鏡で摘出した腔をしっかり観察を行い、残りがないことを十分に確認しないといけません。浸潤性のしゅようであることも多いため正常下垂体の状態、腫瘍の状態にもよりますが、腫瘍の接した正常下垂体を一部採取する必要もあります。

ACTH産生腫瘍(クッシング病)の術後経過

ACTH産生腫瘍の場合、正常の下垂体組織が常に高いACTH、ステロイドホルモンにさらされることで、ACTHを産生する能力が低下していることが多いです(negative feedbackという本来下垂体に備わったホルモン調整機能が長期にわたって作用することによります)。したがってACTH産生腫瘍の術後にはACTHが足りない状態(ステロイドホルモンが足りない状態)になります。このためステロイドホルモンを補充する必要があります。術後1〜2年の経過で改善することもありますが、場合によっては長期に補充が必要となります。
手術によって摘出が難しく根治が得られない場合には、腫瘍の状態によって放射線治療(ガンマナイフ治療)を追加したり、薬物治療が行われます。

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