内視鏡は下垂体腫瘍、脊索腫、頭蓋咽頭腫のみならず様々な脳腫瘍に対して有効な治療法です。愛知、東海地方の中核病院である名古屋大学脳神経外科の内視鏡治療をお知らせします。

経鼻内視鏡手術(再発症例に対するアプローチ)

再発手術のときの基本的な考え方をお示しします。(とりあえず文字だけ。そのうち挿し絵など入れてわかりやすくできたらなーと思っています。)

再発手術の心得

・他人の土俵で戦わない!
まず第一に再手術のときは他の術者の再発を行うことが多いでしょうし、自身の手術であっても再発までの期間で手術の考え方、技術が進歩していることによる開窓範囲の変化などがあり、もはや今の自分の手術とは言えない状態となっています。また、術後創部が治癒することで開窓範囲が狭くなっていることもあります。これはもはや他人の土俵としか言いようがない状態です。
内視鏡はこの他人の土俵であっても十分に視野が得られてしまうところがいいところでもあり、悪いところでもあります。摘出は見えればいいというものではなく、スムーズな操作ができないと安全に行なえませんので、妥協をせずに開窓を行いましょう。
とにかく初回手術と同様な術野の展開を心がけないといけません。

・出血はこまめに止血する!
再手術は出血が多くなりがちです。癒着を剥離した面からじわじわ出血します。最初は大したことなくても、蝶形骨洞に至るまでにちょっとした出血が重なり内視鏡汚染の原因となります。小川が大河になります。ちょっとした出血でも順番に止血をしていきましょう。僅かなウージングであればボスミンガーゼで止血が可能ですが、割と出るようなら焼灼で止めてください。”ほっといても止まるかな?”と思うような出血は確かにほっといても止まりますが、前述のとおり初回手術と違って出血点が多く大河になることもありますので、ある程度のとこでしっかり止血しましょう。未来の自分のためです。

・アプローチ法にこだわらない!
我々は経中隔法を基本としていますが、以前の手術で自然孔拡大法が行われている、あるいは以前の手術で鼻中隔に大きな欠損がある場合には自然孔拡大法を用います。臨機応変に切り替えましょう。

再発手術時の経中隔法

他の術者が行った手術後の再発手術では、前の手術がどの様になされたのか把握することは完全には難しいです。
しかしながら殆どの症例で共通して
・鼻腔底側の中隔は残っている
・篩骨垂直板も上方では残っている
と言えます。

再発手術時の経中隔法では真ん中をしっかり捉えて左右の粘膜の損傷を可能な限り抑えつつ剥離操作を行うことが必要です。

再発中隔法の手順は以下のとおりです。

1.粘膜切開は前回の粘膜切開部がわかるならそこを切開。わからないなら初回手術同様粘膜皮膚以降部後方で縦切開。

2.軟骨膜下で剥離をする。癒着が激しくわからない場合には無理をせずに鼻腔底側を観察する。するとそこには鼻腔底からせり出した中隔骨があるはず。ここであれば多少ぐりぐりしても軟骨と違って損傷することなく骨膜下に剥離を行うことが可能。一度剥離したら鼻腔底を這うように置くまで剥離を進めていく。ゴルフ剥離子を上に向けて奥から手前に引くように剥離すると真ん中を捉えた剥離が可能である。このときあまりぐりぐり引っ張るのではなくちょっと引っ掛けながら優しく引っ張る感じで何度もやると自然に分かれる事が多い。
ある程度まで剥がしていって無理そうなら今度は篩骨垂直板方向から下に向かって剥離を行います。真ん中が一番くっついている事が多く、欠損していることも多いため、ここは最後にはがします。上と下から剥がして剥がれにくいところを最後に持ってくるようにします。

いずれにしても鼻腔底側もしくは篩骨垂直板を頼りに中心を見極め、そこから剥がしていくことが重要です。

3.蝶形骨洞前壁を大きく露出する。
再手術症例では蝶形骨洞前壁に粘膜(というよりも癒着した線維組織)が強く張り付いています。これは剥離しようとしてもどこかで限界が来るので、モノポーラでのカットが必要です。カットする際に蝶形骨洞前壁の前方で切るとSphenopalatine arteryが損傷するので、蝶形骨洞前壁に沿ってもしくは蝶形骨洞前壁の後方で切開するようにしましょう。後方で切開しても残った組織を蝶形骨洞の前方に剥離することで骨を露出することが可能です。骨を露出したら必要な分だけ骨削除します。
上方は上鼻甲介がありますが、再手術の際には骨が固くなっており圧排できないことも多いです。この場合は上鼻甲介の後方だけ骨削除すると圧排が容易になります。圧排した上でいつもどおりの蝶形骨洞前壁の開放を行いましょう。

4.蝶形骨洞内隔壁の除去
再手術時にはしばしば肉芽や再生した骨が存在しています。これらはできるだけ除去するようにします。特に肉芽や粘膜は引っ張って摘出しないようにしましょう。以前の手術で内頚動脈が露出していた場合、牽引することで内頚動脈が損傷する可能性もあります。内頚動脈の走行に注意して、内頚動脈の前の粘膜・肉芽の削除を行いましょう。術前のCTで内頚動脈前面に骨が残っていることを確認することも重要です。しっかり隔壁などを除去して、Optic canalも確認できるようにしましょう。Optic canalは再手術時にも確認できる重要な解剖構造です。

5.トルコ鞍開窓の確認、開放
トルコ鞍を開窓をするときには、この部分の粘膜を適当に剥がすのではなく、まずは骨窓がどの程度か剥離子で触って確認しましょう。内頚動脈の前でなければ、やや鋭の剥離子で骨窓のedgeをこするとどこかで骨が露出します(一箇所でも骨が出ればいいので、出にくいところにこだわってこする必要はありません。適当に見切りをつけながらさわさわこすりましょう。)骨が露出したらその周りの粘膜を少し剥がします。骨と硬膜はそれほど癒着していないことが多いため、骨縁と硬膜の間に皿状の剥離子を挿入し骨縁を撫でるように動かすと骨縁がどんどん露出していきます。ある程度はがすと線維質な組織が引っかかってそれ以上剥離が無理になるためモノポーラで切るか、剥離子で破壊してください。ある程度剥離できたらケリソンで骨窓を拡大します。

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