内視鏡は下垂体腫瘍、脊索腫、頭蓋咽頭腫のみならず様々な脳腫瘍に対して有効な治療法です。愛知、東海地方の中核病院である名古屋大学脳神経外科の内視鏡治療をお知らせします。

脳幹部海綿状血管腫

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脳幹部海綿状血管腫のまとめ

海綿状血管腫は脳内の血管奇形の一つで、脳幹部に発生したものです。
脳ドック等で無症状の状態で発見される海綿状血管腫もあります。
無症状であれば経過観察を行います。軽度の出血でも神経症状を出す可能性がありますが、手術を行わずに経過を見ていても症状が自然軽快することがあります。
治療が必要なものは、症状が強いもの、出血を繰り返すものなどです。手術治療が基本となりますが、部位に応じて手術法が変わってきます。
脳幹に対するダメージが最も低い方法を選択する必要があります。十分な経験のある医師と相談し治療方針を決定してください。

海綿状血管腫は字面から腫瘍のような印象を受けますが血管奇形の一種です。小さなものは症状のないものも多く、経過観察とされることの多い疾患です。
脳のどこにでも発生しえますが、特に脳幹部にできたものは出血率が高く、神経症状を出しやすいという特徴があります。
脳幹は神経が密集した場所であるため、海綿状血管腫が拡大することで様々な神経症状を出します。場合によっては生命に関わる可能性もあるため十分に注意して治療法を選択する必要があります。
脳幹は中脳、橋、延髄の3つに大別され、このうちもっとも頻度の高い部位は橋です。

脳幹部海綿状血管腫の特徴・症状

他の部位の海綿状血管腫同様に無症候性(症状がないもの)で発見されることも多いです。他の部位の海綿状血管腫との違いは、脳幹という重要な神経が密集しているところにできる点です。小さな出血でもあらゆる症状を呈する可能性があります。また脳幹部海綿状血管腫は再出血率が高いことでも知られています。出血を起こすことで徐々に周辺の神経組織を圧排し破壊していくことで手足の麻痺複視(ものが二重にみえること)、嚥下障害(飲み込みがわるくなること)、失調症状(手足は動くけどスムーズに動かせない)、感覚障害(手足のしびれる感じや痛み、手足がどこにあるのかわからない感じ)などが起きます。これらの症状は部位によって違います。延髄にできる延髄海綿状血管腫では呼吸障害を引き起こすことがあります。
出血を繰り返すことで致命的となることもありますので、治療の時期については主治医と十分な検討を行ってください。

脳幹部海綿状血管腫の治療

無症候性の場合には経過観察として問題ありません。
また症状が軽い脳幹部海綿状血管腫についても経過観察をしていくことで、徐々に内部の血腫が吸収されて症状が改善することがあります。
出血を繰り返しサイズが大きくなる脳幹部海綿状血管腫については治療を考慮すべきと考えられます。
治療の基本は手術による摘出です。
少し専門的な話ですが、Two point methodという方法で手術のアプローチルートを決めるのが一般的です。これは海綿状血管腫の中心部に1ポイントを、脳幹表面に近い部位にもう1ポイントを置き、その2点を通るルートで手術を行うのが良いという考え方です。我々はこの方法に基づいて手術の方法を考えています。
脳幹は重要な神経が密集した部位です。この内部にできる脳幹部海綿状血管腫の治療は非常に高難度な手術と言えます。脳幹部海綿状血管腫は脳幹の内部に発生します。
海綿状血管腫が脳幹表面に露出している場合はこの部位から内部に侵入しますが、多くの脳幹部海綿状血管腫は脳幹の中に埋もれるように存在しているため脳幹の一部を切開して海綿状血管腫に到達し摘出する必要があります。前述の通り脳幹は重要な神経の密集帯ですので、脳幹を切開する部位が非常に重要です。
脳幹部には種々のsafe entry zoneと言われる、一部切開しても症状が出にくい部分があります。Two point methodを用いておおよその侵入ルートを決定し、その近くのsafe entry zoneから脳幹の中に入ります。
手術中に静脈奇形をみることが多いですが、この静脈奇形は正常の脳幹の血流にも関与しますのでできる限り温存する必要があります。

当院における脳幹部海綿状血管腫手術の工夫

脳幹部海綿状血管腫は手術のリスクが非常に高いこともあり、症状が軽い場合には経過観察を選択させていただくことも多いです。
これは海綿状血管腫内の血腫が徐々に吸収され、症状が自然に改善する可能性もあるからです。
脳幹部海綿状血管腫は再出血の率が高いとはされていますが、必ず起こるとも言えないものであり、直近の出血から時間がたっているようであれば再出血の率が下がるからです。
出血が頻発するものや静脈奇形を伴っているものについては再出血率が高いとされています。このため画像を拝見し、再出血による神経障害が起こる可能性が手術リスクを上回ると判断されたときには手術治療をおすすめしています。

手術の前には様々な画像診断を行います。中でも神経組織の位置を把握することが重要と考えています。MRI撮影のなかで、DTI(diffusion tensor image)という撮影法があり、運動神経などの重要な神経組織がどの位置に走っているのか把握することができます。また静脈奇形の有無や周辺の正常構造を細かい画像撮影で確認します。これらを組み合わせて、術前に3D画像を作成しシミュレーションを何度も行います。予想される手術リスクを手術前に十分に把握することが手術成功の鍵となると考えています。

手術では可能な限り全摘出を目指します。手術は全身麻酔で行いますが、全身麻酔中でも神経の状態が把握できるように電気生理を駆使します。頭蓋骨を経由して神経を刺激して神経を傷つけていないかどうかを確認したり、脳幹表面、内部を直接刺激して近くに手足を動かす神経がないかどうかを確認しながら摘出を行っていきます。

当院では内視鏡を用いた手術法を行っています。脳幹は頭蓋内でももっとも深い部位に存在しています。脳幹部海綿状血管腫はその脳幹のさらに奥に存在しているため、非常に深い術野になります。内視鏡は深い術野であっても非常に明るい視野を得ることが可能であり、脳幹部海綿状血管腫の取り残しや細かな静脈奇形を把握するのに有効であると考えるからです。
また内視鏡は水中でも視野を得ることが可能です。脳は本来水中に存在する組織であり、摘出操作を水中で行うことは脳の環境を大きく変えないことにつながると考えられます。また、水中にすることで脳幹内部を十分に観察できるため、これも海綿状血管腫の取り残し予防につながると考えられます。

このように内視鏡を用いた手術を基本とし、術前、術中に考えられる限りのツールを有効活用して手術に望んでいます。

脳幹部海綿状血管腫の実症例について

現在まとめています。徐々に充実させていきます。

脳幹部海綿状血管腫の入院期間について

脳幹部海綿状血管腫では手術前に綿密な検査が必要です。通常のMRI検査に加えて神経線維の走行を把握できるMRI-diffusion tensor imaging、周辺の血管構造を把握するために造影剤を用いた造影MRI検査を追加で行います。また骨の状態や、周辺の血管との位置関係などを把握するため3D-CTA(造影剤を使ったCT検査で非常に細かく撮影することで3D画像を作成するのに役に立ちます。これらの検査を行った上で術前に3Dモデルを作成し、手術戦略を練る必要があります。
症状にもよりますが、上記の検査におよそ2日程度を要します。(症状が強い海綿状血管腫の場合には一部の検査を省略し準緊急的に手術を行わせていただくこともありますが、できるだけ情報を集めるべきと考えています。)

術後はICUに1〜2日間の入室をしていただきます。術直後〜翌日午前中は全身麻酔をかけた状態で脳を休めます。この間は挿管-人工呼吸器での管理を行います。術翌日のCTで特に問題のないことを確認し麻酔薬を切り全身状態を把握していきます。

術後3日目に一般病棟に移ります。通常はこの段階でリハビリを開始します。食事については神経症状に応じて開始しますが、飲み込みに問題ないことが確認された段階でできるだけ早期に開始します。

この後は神経症状に応じて入院期間が前後します。もっとも早い方で約7日の入院後自宅退院された方もみえますが、1ヶ月程度の入院の後リハビリ病院を経て自宅に帰られる方もおられます。
術前の症状、海綿状血管腫の部位に応じて術後の治療は大きく変わります。実際の診察をさせていただいたときに概ねの予定がお伝えできると思います。

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